夜汽車

長いトンネルを抜ける
見知らぬ街を進む
夜は更けてく
明かりは徐々に少なくなる
話し疲れたあなたは
眠りの森へ行く
夜汽車が峠を越える頃 そっと
静かにあなたに本当の事を言おう

夜汽車 / フジファブリック
彼らや、彼女らの声はいつだって身近にある
存在で、同じくいつだって突然消えてもおかしくない存在なんだよな。

悲しいことに愛理との出逢いを覚えてない。
絶対そんなことないんだろうけど、愛理とは
いつの間にか友達になっていた。
彼女は、寒い北の生まれの子で東京に上京してきた。当時の住まいは新井薬師駅の近くで、ユニットバスの狭い1Kに住んでいた。
よく遊びに行って、寝たり、彼女が煙草を吸う姿を眺めたり、音楽の話をしたりした。

彼女はよく飛ぶ子だったんだ。
睡眠薬がないと眠れない夜が多くて
結構たくさんの友達に助けを求めてた。
そんな事が頻繁にあって、私達の中では
当たり前になり、呆れ始めるようになった。

今思えば、当たり前なんてないのに。
どんなことでも。ね。
でも私たちも、私たちで日々生きるのが
精一杯で彼女と少し距離を置くようになった。

でもある夜、深夜の2時頃かな。
普段は、ラインの電話でかけてくる彼女が
珍しくボイスメッセージで連絡があった。
それを聞いてみると「飲み過ぎちゃった」
と、呂律が回ってない一言だった。
その「飲み過ぎ」というのが、
お酒じゃないってことくらい
わたしには分かった。
あ、薬のことなんだろうなと。

先程も話したように、わたしは少しそれに
慣れて呆れてたもんだから。
最初は、淡白な返しをした。「大丈夫か?」
さほど心配してない癖に何言ってんだよって
彼女に思われてもおかしくないくらい。

ボイスメッセージのやりとりを続けていくうちに、事の大きさに気づき始める。
彼女はもう起き上がることも出来なければ、携帯を握るのも、指を動かすのも
精一杯というほど薬が回ってたのが声でわかる。

でも現状が分かったところで家に駆けつけるほど、距離は近くないし。何より電車が動いてない。
メッセージがプツンと来なくなって、彼女が眠りについたと察する。
わたしはただ彼女が朝、目が覚める事を祈ることしかできず。わたしも眠りについた。

翌朝、別の友人からラインが入っていて。
メッセージを開いてみると、
「愛理は、先に旅立った。」とだけ。

罪悪感を感じた。
彼女の存在の重みを初めて感じた。
軽率だったなと。
わたしはしばらく、何も出来なかった。

誰かが言ってた、
それが彼女の幸せだったのならば
それでいいじゃないか、と。

考え方を変えれば、そうかもしれない。
そうだったらいいなって願っている。
彼女にとって、
もっと良い友達になりたかった。

だから、ひとりひとり大事にしていきたい。
そう思うようになった。

「疲れた」も「つらい」も、
感じ方はみんな違うし、同じにするものじゃない。それは、彼女から教わった。

わたしもこの命がある限りは、
精一杯守っていきたい。
そして君の声もちゃんと噛み締めていきたい。

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